弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

判断能力の衰えから生じる危険回避の制度

  〜法定後見制度その6    法定後見人等の職務と権限C

     中小企業法務研究会  後見事業部会  弁護士  平岡  健太郎 (2014.12)

今回も、成年後見人の財産管理に関する具体的職務のお話の続きです。

  • E  不動産関係(前回のつづき)

    前回、成年後見人が本人の居住用不動産を処分する場合には家庭裁判所の許可が必要であることをお話しましたが、この「処分」には、売却だけでなく賃貸、抵当権の設定、使用貸なども含まれます。
       また、「居住用不動産」は、現に居住している場合のみに限られず、将来的に居住の予定がある場合や、過去に本人の生活の本拠として使用していた場合なども含まれます。もっとも、将来的に居住の予定があるといえるかどうかの評価は、医学的、社会福祉的な観点からの考慮が必要となる場合もあります。
       この居住用不動産の処分の許可を求める申立てが行われた場合、家庭裁判所は、処分の必要性、本人の生活状況、本人の意向、処分条件の相当性、本人の推定相続人等親族の処分に関する意向等を考慮して、認容または却下の審判を行います。なお、この審判に対する不服申立てはできませんので注意が必要です。
       成年後見人が家庭裁判所の許可がないにもかかわらず居住用不動産を処分した場合の法的効力については、いくつかの考え方がありますが、その処分行為は無効であるとする考え方が主流です。
       これに対して、本人自らが居住用不動産を処分してしまった場合は、処分行為を無効としない考え方が有力です。もっとも、成年後見人としては、このような行為を発見した場合は、直ちに家庭裁判所に報告して協議し、取消権の行使の検討を行うべきでしょう。

  • F  身上に関する契約

    居宅介護サービス、施設入所契約、診療契約等、本人の身上に関する契約の締結も、広い意味の財産管理業務に含まれます。
       これらの契約にあたっては、本人の状況に見合ったサービスや施設の選択が求められますが、成年後見人だけで判断することが困難な場合がありますので、社会福祉士、ケアマネージャー、ケースワーカー、担当医師などの意見を聴くことも考慮すべきでしょう。
       また、当初の契約時だけでなく、契約後に適切なサービスが提供されているかについても、適宜チェックしておく必要があります。このようなチェックは、財産管理業務の一環としてだけでなく、身上監護業務の一環としても重要なものとなります。

次回は、財産管理の例外的位置付けとなる本人による日用品の購入その他日常生活に関する行為と身上監護業務についてお話をさせていただく予定です。