弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

判断能力の衰えから生じる危険回避の制度

 〜法定後見制度その2 法定後見制度の申立手続A

  中小企業法務研究会 後見事業部会 弁護士 平岡 健太郎 (2014.03)

本稿は、法定後見制度利用の申立手続に関するお話の続きです。申立権者と必要書類につきましては前稿をご参照下さい。なお、大阪家庭裁判所に申立てを行う場合は、「後見申立てセット」と呼ばれている同裁判所が用意している定型書式を使用されると手続がスムーズに進みます。

● 申立先と注意事項

 法定後見制度利用のための申立ては、判断能力が不十分になった方(「事件本人」といいます)の住所地を管轄する家庭裁判所へ行います。裁判所によっては、申立てを行ったその日のうちに面談等を行う場合があります。大阪家庭裁判所の本庁や堺支部もこのような取り扱いを行っているため、申立ての際には事前に予約が必要です。

● 申立てにかかる費用と鑑定の実情

まず、収入印紙3400円分と郵券が後見の場合で3600円、保佐・補助の場合で4700円が必要です(標準の場合。消費税率の改定により変更予定です)。このほか、5〜10万円程度の鑑定料の予納を求められることがあります。
 最近では、実際に鑑定が行われる割合は2割を切っており、予納鑑定料の金額も約7割が5万円以下で運用されています。鑑定が行われる場合の期間は、半数が1か月以下で、2か月を超える事案は1〜2割程度です。なお、補助の場合は原則として鑑定は行われません。

● 審理期間

標準な場合で、申立てから1〜3か月程度で、後見等の開始の審判が出ます。鑑定が行われる場合は、さらにその期間が必要です。

● 誰が後見人等になるのか

申立を行う際に、誰を後見人等にするか(候補者)の希望を出すことができますが、必ずしも希望どおりの方が選任されるとは限りません。他の親族や弁護士等の専門職が選任されることもあります。
 実際に選任された事例を見ますと、事件本人の子が選任されたケースが圧倒的に多くを占めています。専門職では、司法書士が最も多く、弁護士、社会福祉士が続きます。最近では、税理士の選任も増えてきています。事件本人の財産が少ない場合は、事実上無報酬または僅少な報酬で後見事務を行ってもらわなければならず、財産の流用等の心配も少ないため、子を選任することが多いようです。
 なお、裁判所による調査の結果、親族間に対立が認められた場合は、候補者がそのまま選任されることは非常に少なくなります。これは、候補者が弁護士等の専門職であっても同様です。

次回は、成年後見人等の権限についてお話したあと、特に後見人の職務について詳しくお話をさせていただく予定です。