弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

判断能力の衰えから生じる危険回避の制度

  〜法定後見制度その3    法定後見人等の職務と権限@

     中小企業法務研究会  後見事業部会  弁護士  平岡  健太郎 (2014.05)

本稿は、法定後見人等の職務と権限に関するお話です。
  法定後見人等が義務として負っている職務は、大きく次の3つに分類されます。

  1. 財産管理義務
  2. 身上監護(配慮)義務
  3. 裁判所等の監督を受ける義務

それぞれの一例を挙げますと、1. としては預貯金の管理、不動産等重要な財産の処分等、2. としては介護契約、施設入所契約、入院等の医療契約等、3. としては家庭裁判所に対し財産目録等の資料を提出して報告し、その監督を受けることなどあります。

ここで注意していただきたい点が2つあります。一つは、法定後見人等の職務は財産に関するもののみに限られるものではないこと、もう一つは、身上監護の職務の中には、必ずしも現実に付き添って療養看護や身の回りの世話などをするところまでは含まれないという点です。

後見等の申立てが行われるきっかけは、本人の財産の処分を行う必要に迫られた場合や遺産分割等相続関係の問題が生じた場合であることが少なくありません。このような場合は特に、財産の処分や相続問題が解決しさえすれば後見人の職務は終わりというわけではないという点に気をつけなければなりません。

また、身上監護については、その字面からは後見人等が本人の日々のお世話までしなければならないようなイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではなく、あくまでも身上にかかわるサービス の契約等に関する職務であるという点に気をつけなければなりません。ちなみに、本人の子が後見人等に選任された場合に、その後見人等が本人である親等の療養看護や身の回りの世話などを行うのは、法的には後見人としての職務ではなく、民法上の扶養義務の一環としてや、親子関係から当然に生じる倫理的義務等に基づくものと考えられます(余談になりますが、自民党が示した憲法改正案では「家族が相互に助け合う義務」が盛り込まれています)。

ところで、身上監護の職務に関して、近年、医療に関する後見人の同意権限の有無が問題なっています。先にお話ししましたように、成年後見人に本人の医療契約の締結権限があることに異論はないのですが、本人の身体への侵襲を伴う医療行為(医的侵襲行為)に関する同意権まで有しているのかという点が問題なっています。この問題は、特に後見人が弁護士や司法書士等職業後見人の場合に顕著に表れますが、原則として後見人には医的侵襲行為に関する同意権までは有していないと考えることの方が多いようです。

次稿は、法定後見人等の職務・権限の続きです。