弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

異議申立て  審査請求

   〜 その1

     中小企業法務研究会  税務訴訟部会  弁護士  室田  朋宏 (2014.05)

税務訴訟で争う処分の種類について

よく争われる典型的な国税に関する処分としては、@更正、A更正をすべき理由がない旨の通知、B決定(処分)、C賦課決定(処分)、D納税告知(処分)が考えられます。

@  更正

更正とは、いったん納税者が申告した税額に誤りがあるとして、税務署長が訂正を行うものです。 更正処分には税額を高くする増額更正と低くする減額更正があります。税務訴訟で争う処分は増額更正となりますが、増額更正のことを単に更正処分、更正などと呼ぶこと多いです。

A  更正をすべき理由がない旨の通知

納税者が一度行った申告について税務署長に減額を求める手続きがあり、これを「更正の請求」といいます(国税通則法23条)。更正の請求は申告の法定申告期限から5年です。 更正の請求があると税務署が職権で調査し、その請求に理由があると判断した場合は減額更正されます。その請求に理由がないと判断された場合は「更正をすべき理由がない旨の通知」をします(国税通則法23条4項)。

B  決定

確定申告書の提出がない場合に、本来納付すべき税が申告されていないと税務署長に判断されると、税務署長が「決定」する処分を行ってその税額を確定させます(国税通則法25条)。

C  賦課決定

@〜Bは確定申告書を提出する場合を前提としていました。申告書の提出によって税額を確定する方 式を「申告納税方式」といいます(国税通則法16条1項1号)。これに対して納付すべき税額が税務署長等の処分によって確定させる方式があり、それを「賦課課税方式」といいます。(国税通則法16条1項2号) 賦課課税方式により課税される場合の典型例としては加算税があります。

D  納税告知

納税者に対して納期限を指定して確定した納税義務の履行を請求する行為を「納税の告知」といいます(国税通則法36条1項)。 納税告知については異議申立て、審査請求、税務訴訟で争う「処分」にあたるかが争われましたが、最高裁判所はこれを肯定しています。(昭和45年12月24日判決)

異議申立てについて

  1. 総論

    不服申立てには、@異議申立てとA審査請求の2つがあります。 異議申立ては、更正決定などの処分をした税務署長等に対して、その処分の見直しを求める手続きです。 異議申立てには、期限があり、更正通知が届いた日から2か月以内に手続きと取る必要があります。 異議申立ては、処分を行った税務署長等に対してその処分の見直しを求める手続きですので、計算間違いなどの明らかな誤りでない限り処分が取り消されることはあまりありません。特に法解釈と争う場合には棄却されることがほとんどであるということです。

  2. 取消率について

    平成24年度の異議申立ての処理件数は3,286件となっています。 処理件数のうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数は325件(一部認容260件、全部認容65件)で、その割合は9.9%(一部認容7.9%、全部認容2.0%)となっており、前年度と比べ1.6ポイントの増加となっています。
    全部認容率は、平成23年が約1%、平成22年が1.6%、平成21年が1.3%となっており、きわめて厳しい数字となっております。

  3. 審理の期間について

    異議申立てについては、異議決定(棄却決定)が出るまでに時間を要しないことが多いようです。国税庁の公表によると、異議申立ての3か月以内の処理件数割合は95.4%となっています(割合は、相互協議事案、公訴関連事案及び国際課税事案を除いて算出しています)。

  4. 直進について

    青色申告書に係る更正処分に不服があるときなどは、異議申立てをせずに、直接、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる制度があります(国税通則法75条4項1号)。これを「直進」といいます。 法的な解釈が争いとなっている場合は、異議申立てで判断が覆ることはあまり考えられないため、異議申立てをせずに審査請求を行う方が時間を短縮できます。 しかし、異議決定に記載されている処分の理由(処分を適法と判断した根拠)を詳しく読んでからそれでも不服があれば審査請求したいといった依頼者がいた場合には、異議申し立てを行うことも考えられます。