弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

判断能力の衰えから生じる危険回避の制度

  〜法定後見制度その4    法定後見人等の職務と権限A

     中小企業法務研究会  後見事業部会  弁護士  平岡  健太郎 (2014.08)

前稿は、法定後見人等の職務の概要についてお話させていただきましたので、本稿はその職務のうちとりわけ財産管理に関する部分について具体的なお話をさせていただきます。

法定後見人等のうち、特に成年後見人は、本人の財産に関して包括的管理権を有し、財産に関する法律行為について包括的代理権を有しています。したがって、成年後見人に選任された方は、その直後から本人の財産に関する様々な手続を行うことになります。

  • @  金融機関関係

    成年後見人は、選任後速やかに本人が口座を有する金融機関に就任したことを届け出る必要があります。速やかに届け出ることで、詐欺による被害などの防止にもつながります。届出用紙や必要書類は金融機関によって異なります。
       金融機関によっては、この届出により自動的に口座名義が変更されたり、従前のキャッシュカードが使用できなくなることもありますので、事前に確認しておいた方が良いでしょう。特に口座名義の変更は、年金や家賃収入等第三者から送金を受ける口座を有している場合に注意が必要です。
       本人が貸金庫を利用している場合にも金融機関への届出が必要となります。早期に本人の財産状況を正確に把握するためにも、貸金庫の利用の有無についても確認しておく必要があります。

  • A  年金関係

    成年後見人は、選任後速やかに年金事務所に就任したことを届け出る必要があります。特に家族等による年金取り込みが行われているような場合には、迅速に行わなければなりません。年金の受給の有無が不明の場合でも、年金事務所で確認することができます。
       年金の振込先も、成年後見人名義の口座に変更してもらいます。この際、金融機関での口座名義の変更手続との関係で、振込ができなくなることがないように注意する必要があります。

  • B  その他の市町村役場等での手続

    健康保険や介護保険、固定資産税等の手続に関しては、市町村役場等への届出が必要となります。原則として窓口へ赴く必要がありますが、近年では郵送による届出を受け付けている自治体もあります。
       なお、この届出により、国民健康保険被保険者証や介護保険被保険者証等が成年後見人の住所宛に届くようになる自治体もありますので、確認が必要です。
       また、固定資産税の納付が口座引き落としになっている場合は、金融機関の口座名義変更手続に関する注意が必要となります。

次稿に続く)